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2008年08月14日

ばあちゃんと仔犬。

エイサーを練習する音を遠くに聞きながら、
お盆を迎えたら、載せたかった話を今日はアップします。

長いけど、今年の冬に体験したうちのばあちゃんと
拾った仔犬の不思議な話。
今年は我が家の新盆です。

【仔犬のこと】
1月のある夕方のこと。
私は近所のファミマで立ち読みをしていました。
ふと、雑誌越しに駐車場を見ると軽トラの上にチョコンと
仔犬が乗っていました。軽トラの荷台から落ちたら危ない
なぁっていうことをほんの一瞬だったけど思ってから15分後、
うちに帰ると庭にその仔犬が一匹で座ってます。軽トラは無かった。
「あ、軽トラから落っこちちゃったんだ」
くらいの認識で、夕闇迫る町に取り残すことはできないし、一晩だけ
と思って家に入れました。日中はあの軽トラのおじさんが探しにくるか
もしれないから庭に出して、会社へ出かけました。そんな日が2−3日
続き、誰かにあげるにしても健康状態を調べなきゃと思って動物病院
に連れて行き健康と言われたその二日後のことでした。

私は仕事でルームメートは仕事が休みで、会社から帰り道に仔犬が
夕方19時くらいからお尻から出血してどんどん衰弱しているという。
もう23時だったけど、救急病院を探して入院させました。

この子はもうダメかもしれないなぁって漠然と思った。
ここから私の長い数日間は始まったのです。

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【おばあちゃんのこと】
仔犬を入院させた夜中、入院費が多額にかかるというので実家の母に
「命を救うと思ってカンパして」というメールを送ると、すぐさま「お金は出すから、
ガンバって助けるんだよ」という返信が届きました。
こんな夜中に起きているなんて珍しいし、どうせ起きているなら電話で今夜の
出来事を細かく話そうと思って電話すると、
一緒に住んでいる祖母が朝までピンシャンしていたのに、夕方19時頃父が帰宅
するとトイレの前で倒れていたそうで。
そのまま緊急入院させると、その夜のうちに危篤状態余命一週間を宣告されました。
大動脈瘤というのが破裂し、体の中で大量出血している。血液が溜まったもうひとつ
のコブが破裂したらおしまい。いつ破裂するか分からない。眠れないまま朝を迎えて、
その日の夜、東京経由で仙台に帰りました。
もう遅い時間だから私は面会に行かなかったけれど、私が仙台に向かっている日に
ほぼ親戚全員とばあちゃんは会い、血圧は低いが普通にしゃべれたからいつもどおり
しゃべり、そして、次の日の朝7時頃に亡くなりました。
私が会いに行こうとしていた朝に亡くなりました。
最期には会えなかったけど、亡くなって最初に会ったのは私でした。
父と母は先に病院を後にして、葬式用に家具を動かしに家に戻った。

15年間一緒に暮らしたばあちゃんと、霊安室でふたりっきりになりました。
一方的に思い出をばあちゃんに語り、泣いて、泣き疲れて霊安室でうとうとしていたそのとき。

携帯電話のバイブが鳴った。

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【おばあちゃんと仔犬】
電話は、動物病院からだった。

---今、子犬ちゃんが非常に苦しんでいます。ウイルスの発症とともに膀胱が
破裂しているようです。大変、苦渋な決断を迫りますが、手術か安楽死か選んでください。
手術をしても助かる確率は・・・
---1時間だけ考える時間をください。
---この子にとって、この1時間は残酷すぎます。すぐに決めてください。  
医者としては、安楽死がこの子を救う唯一の方法だと思います。
----とにかく、一人では決断できないので10分だけ時間をください。

その後、母や、ルームメイトに急いで電話をして、その結果安楽死をお願いした。
私が選ぶことじゃなかったけれど、
選ばなければいけなかったこと。

横たわるばあちゃんに「これでよかったんだよね」と問いかけました。

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【不思議なこと】
今、振り返るとばあちゃんが急に倒れた時間と、仔犬が衰弱し始めた時間が
ほぼ同じ。
病院に運ばれた時間も同じで、お互い丸一日意識があって、亡くなった時間も
ほぼ同じ。
ばあちゃんは血液が溜まったコブがお腹で破けて、仔犬は膀胱が破裂。
人が亡くなるときって、何気ない出来事にも故人と意味づけをして自分を慰めようと
してしまうけれどこれは、ほんとに不思議な出来事。おばあちゃんが何かを伝えたくて
沖縄の名も知れない仔犬にその思いを託して私の庭に使者として送り込んでくれたような
気がしてなりません。
だってばあちゃんと同じ時間に同じ症状でいたんだもの。

遺品を整理するなかで先に亡くなったじいちゃんからの戦地からのラブレターが見つかり、
読んだり、
ばあちゃんとお友達と撮った白黒写真の裏に「戦争が終わった。やっと安心して暮ら
せる。でもこれからが大変だ。」というメッセージを読んだり。
私が生まれるずっと前のばあちゃんに、ばあちゃんが亡くなった事で出会えた気がします。
ばあちゃんと離れて住んで5年になり、ばあちゃんのいない生活が普通になっていたのに、
思った以上に心の隙間はぽっかりと開いていて 時々、このことを思い出すと
心に隙間風がひゅーっと吹き抜けるのを確かに感じます。
運転しながら、ホロリと泣いたこともあります。

ここが沖縄でよかった。
大きな力で守られて、悲しいことも、
たとえ心に隙間が開いていても暮らしていける。

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【おまけの不思議話】
他にも、不思議な話があって、親戚一同で相続関係の書類を捜していたときのこと。
午前中一杯探して、見つからずとりあえず他の部屋でお昼を食べていました。
一足早く食べ終えた私は何の気無しにばあちゃんの部屋へひとりで行くとなぜか
ピンときて迷い無く、椅子にあがり、タンスと天井の僅かな隙間に隠してあった書類を
見つけた。あんなに大勢で探しても無かったのに、私がひとりで部屋に訪れたときに
そんなタンスの上なんて普段見ないところにピンと行くなんて。
たぶん、ばあちゃんが導いてくれたんだはず。




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この記事へのコメント
以前に動物病院の話題の時に出た仔犬にはそんな悲劇があったんですね。それにしても不思議な話です・・。
Posted by ゴン at 2008年08月15日 06:46
ゴンさんへ
ただの偶然といえば、それまでなんですが
意味づけしてしまうと、とっても不思議ですね。
仔犬くんは、私的には悲劇ではないかなーと
感じてます。
最期のひと時を、えさを食べて、安心なねぐらで
休めて、苦しかっただろうけど病院で
静かに命を引き取ったのですから。
いろんなことがありますね☆
Posted by 岬 at 2008年08月15日 12:10
でも軽トラの飼い主はどうしたんでしょうね?犬の10戒にもありますが、飼い主に看取られることが犬の至福なのにな。でも岬さんによくしてもらって、きっとあの世で感謝しているでしょうね。
Posted by ゴン at 2008年08月15日 20:55
ゴンさんへ
軽トラの飼い主は、探しにも帰ってこないから
捨てていったのかもしれないですね。
犬の十戒ってのがあるんですねぇ。
あの世で元気に走りまわっていたら私も
嬉しいです。
Posted by 岬 at 2008年08月15日 23:39
犬の十戒はネットで検索すれば読むことが出来ますよ。泣ける内容です。
Posted by ゴン at 2008年08月16日 08:07
ゴンさんへ
犬の十戒を読んでみました。
以前、犬を飼っていたときのことを
思い出すと、かなり、私は十戒を
破ってました。
犬って健気ですね・・・
Posted by at 2008年08月16日 22:03
こんにちは。

今さらながら「ばあちゃんと仔犬」拝見させていただきました。
胸が苦しくなり、涙がこぼれそうな自分がいます。

亡くなった私のおばぁは癌でしたので段々衰弱していくのが辛かったのですが、岬さんのおばあちゃんの場合は突然の出来事だったのですね。

最期に一目会って、言葉をかけてあげられなかった事は辛かったと思います。

でもおばあちゃんはきっと岬さんが会いに来てくれたことを喜んでくれたでしょう。

仔犬の安楽死という決断にも それでいいんだよ とおばあちゃんもうなずいてくれたと思います。



頑張ってください。


*乱筆乱文ですみません。
Posted by レモンピーラー at 2010年12月10日 12:59
★レモンピーラーさん
おおっ、過去記事までさかのぼって読んで
下さっているんですね。ありがとう。
今思っても不思議な出来事ですが、ばあちゃんらしく
逝ったし、お伴も連れて行ったしこれで
よかったんだはずなぁと思っています。
Posted by 岬 at 2010年12月11日 21:44